長瀬商店と長瀬映像文化財団
第1号自動現像機
本財団のルーツは、大正末期にまで遡ります。長瀬商店取締役・長瀬徳太郎は、折りからの不況の中、映画用生フィルムの輸入販売に進出しました。やがて昭和を迎えて事業を軌道に乗せたころ、輸入元であるイーストマン・コダック社から、ある提案を受けます。現像設備の導入です。
長瀬徳太郎は周囲の反対に屈せず、トーキー映画時代の到来を見通して、商社でありながらフィルム現像サービスをスタートさせました。振り返ると日本の映像文化は、ここから始まったと言っても過言ではありません。
昭和36年当時の東京工場
こうして長瀬商店は、我が国初の自動現像機によるフィルム現像により映画の隆盛期を支えていきます。1935年には京都・太秦に極東現像所=後の東洋現像所=として創業し、やがて世界中から高い評価を受けることになる劇場映画作品をはじめ、東京裁判の記録や東京オリンピックの公式記録映画制作にも携わりました。
そしてフィルムからビデオへと推移しつつある1986年には、IMAGICAと改称して新生します。制作技術全般へと事業の幅を広げることにより、数々のエポックメーキングの現場に立ち会ってきました。このような経緯から本財団では、映像を単なる記録物としてではなく、文化遺産として確実に未来に遺す責任があると考えております。
本財団設立当時の五反田・東京映像センター(2021年11月閉館)
本財団の設立は、映画文化の発展とともに歩んできたIMAGICA創業80周年を記念した、社会還元のひとつとして位置づけております。映画100余年の歴史ですが、この取り組みはまだ始まったばかり。映像文化の承継と振興の一助となれば幸いです。